「müssen」か「brauchen ＋ zu」か？

皆さんは、話法の助動詞「müssen（：英 have to）」の代わりとして、以下のような言い方があるのをご存知でしょうか？

Du musst nur das Ticket kaufen.
→ Du brauchst nur das Ticket zu kaufen.
（：チケットを買うだけでいいよ。／英 You only have to buy the ticket.）
Du musst das Ticket nicht kaufen.
→ Du brauchst das Ticket nicht zu kaufen.
（：チケットを買う必要はないよ。／英 You don’t have to buy the ticket.）

（※ 正確に言うと、「müssen」＝「brauchen ＋ zu」ではないのですが、簡単に説明するために今はこのような言い方をしています）

「müssen」を使った文章の方が簡単でシンプルでは…？

「zu 〜」ということは、不定詞節？
なんで使う必要があるの？

と、思う方も多いでしょう。

どうしてこのような言い方が存在するのでしょうか？
どのような場合に使うのでしょうか？
その理由について説明します。

いつ使う？「müssen」との違い
「brauchen ＋ zu」３つのパターン
「nur」を使った例文
「nicht」と「kein」
「brauchen ＋動詞の原形」（会話のみ）

いつ使う？「müssen」との違い

「müssen」
… 直接的で、命令のような少し強めのニュアンス
「brauchen ＋ zu不定詞節」
… 「müssen」より柔らかいニュアンスで、助言・提案のような意味合い

以上のような違いから、会話において、

du（：君）
ihr（：君達）
Sie（：あなた、あなた達）

に対して助言・提案などを言い表す場合に非常によく使われます。

また、二人称以外では、「brauchen ＋ zu不定詞節」を使うことはあまりありません。

【例】
「私は新しいテーブルを買う必要があります。（英 I need to buy a new table.）」
をドイツ語にすると？↓↓

Ich brauche einen neuen Tisch zu kaufen.
（→ 文法として間違いではありませんが、このような言い方をすることはほぼありません）

Ich muss einen neuen Tisch kaufen.

「brauchen ＋ zu」３つのパターン

最初に紹介した例文で、「nur」や「nicht」に赤線が引かれていますが、動詞「brauchen」は、

nur
nicht
kein

これら３つのうちのどれかを使う場合にのみ、「brauchen ＋ zu不定詞節」を使うことができます。

brauchen ＋ nur ＋ zu不定詞節
（：〜するだけでいい／英 only have to, only need to）
brauchen ＋ nicht ＋ zu不定詞節
（：〜する必要はない／英 don’t have to, don’t need to）
brauchen ＋ kein ＋ zu不定詞節
（：〜する必要はない／英 don’t have to, don’t need to）

「nur」を使った例文

ここに署名するだけでいいよ。
You just need to sign here. / All you have to do is sign here.

Du brauchst nur hier zu unterschreiben.

君達は、時間通りに来ればいいだけだ。
You (guys) just need to be on time.

Ihr braucht nur pünktlich zu sein.

君は僕に電話するだけでいいんだよ。
You only need to call me.

Du brauchst mich nur anzurufen.

君達はこの２つのルールを学ぶ／覚えるだけでいい。
You (guys) just need to learn these two rules.

Ihr braucht nur diese zwei Regeln zu lernen.

He only needs to click on the Link.

Er braucht nur den Link anzuklicken.

痩せたいなぁ…。
I want to loose weight.

Ich möchte abnehmen.

食べる量を減らせばいいだけだよ。
You just need to eat less.

Du brauchst nur weniger zu essen.

ここは暑すぎるよ。
Here it’s too hot.

Hier ist es zu heiß.

窓を開けるだけでいいのよ（／窓を開けたらいいじゃない）。
All you need to do is open the window.

Du brauchst nur das Fenster zu öffnen.

「nicht」と「kein」

「nicht」と「kein」の違い

どちらも否定を表す単語ですが、２つの違いについて簡単に説明すると、

「nicht」＋動詞・形容詞 …
「kein」＋名詞

以上のような違いがあります。

「nicht」と「kein」の違いについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください↓↓

「nicht」を使った例文

君は明日早く来る必要はないよ。
You don’t have to come earlier tomorrow.

Du brauchst morgen nicht früher zu kommen.

君達はお皿を洗う必要はないよ。
You (guys) don’t have to wash the dishes.

Ihr braucht das Geschirr nicht zu spülen.

（君はそのことを）彼に言う必要はないよ。
You don’t have to tell him.

Du brauchst es ihm nicht zu sagen.
/ Du musst es ihm nicht sagen.

He doesn’t have to work today.

Er braucht heute nicht zu arbeiten.
/ Er muss heute nicht arbeiten.

「kein」を使った例文

君は飲み物を買う必要はないよ。
You don’t need to buy any drinks.

Du brauchst keine Getränke zu kaufen.

あなたはメールを書く必要はありません。
You don’t need to write an e-mail.

Sie brauchen keine E-Mail zu schreiben.

君は上着を着る必要はないよ。
You don’t need to put on a jacket.

Du brauchst keine Jacke anzuziehen.

あなたはフォームに記入する必要はありません。
You don’t need to fill in a form.

Sie brauchen kein Formular auszufüllen.

それは危険なの？
Is it dangerous?

Ist das gefährlich?

いやいや、怖がらなくていいよ。
No, you don’t need to be afraid.

Nein, du brauchst keine Angst zu haben.

何か持って行ってもいいかな（／何か持って行こうか）？
Can I bring something?

Kann ich etwas mitbringen?

いや、何も持ってくる必要はないよ。
No, you don’t need to bring anything with you.

Nein, du brauchst nichts mitzubringen.

「brauchen ＋動詞の原形」（会話のみ）

会話において、より文章を短くするために、「zu」を言わずに「brauchen ＋動詞の原形」を使うことも多いです。
（※ 文法として正しい言い方ではないので、試験などで使ってはいけません。笑）

【例】

Du brauchst morgen nicht kommen.
Ihr braucht keine Getränke kaufen.